田代一倫 『はまゆりの頃に 三陸、福島 2011~2013年』

151019

表紙は風景だが、内容は三陸で暮らす人々を撮ったポートレイト。1ページに1枚のポートレイト写真と短い文章が、470ページ近くの分量続く。東日本大震災の被害をマクロな視点で語ること(倒壊家屋の家族や、被害者数など)も大切だけれど、この作品のとるアプローチはその逆だ。被災地にいる人の写真を撮る。同じ距離を保ち、同じ露出で、何もかも同じ方法で。そのストイックさに、被災した人々は我々と同じ位置にいる人々なのだと思い知らされる。短い文章とある瞬間しか切り取らない一枚の写真なのに、それでも我々はその人のバックグラウンドや生活や周りの人々に思いを馳せる。この本は、共感性が被災にあった人々に向けられることに意味を持たせているが、僕たちはその共感性を日常にも持ち込むこともできる。電車で前の席に座っているおじさんや、エレベーターに乗り合わせた親子などなど。彼らがやはり自分と同じ位置にいるのだと気づくことで、世界はより優しいものになっていくのだと感じた。

books, 2015年10月19日

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です